芸術の都・パリ。
多くの芸術家を惹きつけてやまないこの地で活躍する日本人にスポットを当て、q parisがその生き方を取材・紹介していきます。
Chisaさん 【プロフィール】 東京都出身。バレエ講師として長く活躍後、国際結婚を機に子供2人を連れてパリ移住を決意。 現在は19、17、7歳の子供3人を育てながらq paris〈キューパリ〉のプロデュースに携わる。 Instagramでは、ママも仕事も女性であることも思い切り楽しむパリ生活を発信し、その飾らない人柄は多くの女性から人気を集めている。 |
【子供時代】「おとなしい女の子」を変えたバレエへの情熱
今では話すと驚かれることも多いのですが、病弱で内気なおとなしい子でした。小児喘息を患っていて毎月のように入院したり、学校では活発な子に自分の意見を言えず、目立つタイプではありませんでしたね。
そうです。
母が趣味でバレエを嗜んでいたり、仲良しの友達もバレエを習っていたので、もともと身近な存在ではありました。
8~9歳の頃に人気演目「シンデレラ」を母と観に行く機会があり、幼いながらにプロの舞台に感動。珍しく自分から「私もやりたい!」と訴えて、本格的にスタートしました。
その後すっかりバレエの世界に魅了され、高校生の頃にはバレエで食べていきたいと考えるように。ただ、日本にはプロのバレエダンサーとして生活ができる人が海外と比べまだ多くはないのが現状。
かつ、誰かに物事を教えたり、人の役に立つのが好きだったので、高校生なりに考えて、講師なら日本でも大好きなバレエを生徒さんに教え喜んでもらいつつ食べていけるかも…?なんて考えたんです。それで、高校卒業後はバレエの専門学校に進みました。
【20代】バレエ講師とママを両立!
はい、講師にはなれたのですが、その後それなりに波乱がありました。
プライベートでいろいろと大変な時期があり、ご縁があって結婚、さらに21歳でママになったんです。
ママになっても講師は続けたいと考えたのですか。
はい、バレエへの情熱は変わらず、転職や主婦という選択肢も頭にありませんでした。
また、これは当時若かったことと、バレエで体力づくりをしていたからだと思うのですが、信じられないことに「ママになって少し余裕ができた」とすら感じたこともありました…(苦笑)。
バレエをしていると早朝に起床、レッスン、リハーサル…とタイトなスケジュールで動くのに対し、赤ちゃんのお世話はご飯や寝かしつけなどの時間さえ守ればあとは自分のタイミングで大丈夫!という理論で、毎日新鮮な気持ちで過ごしていたのを覚えています。
もちろん、今では同じことはできませんし、そもそも忙しさの種類が全く違うと痛感しながら子育てしていますが…。ともかくそんな期間を経て、バレエの世界でこれからも頑張ろうと気持ちを固めたのが22歳の頃です。
「私にはこれしかない」と思っていたので…スタッフの方の頭の片隅に残ろうと、バレエスタジオやジムに営業したりもしました。
その後、小さい2人の子供をかかえシングルマザーになってからは「私がこの子たちを守らなきゃ」とさらに働きましたね。そんな中でも、生徒の成長を見守り、保護者の方の嬉しそうな顔を見ることができるのは日々の喜びでした。
今思えば「私、頑張ったな」と思えますが、当時は頑張っているという意識すらなく、自分を褒めることもありませんでした。ひたすら目の前のタスクに向き合い「やるしかない」と必死でしたね。
バレエをしていると、舞台の上では常に笑顔でいなくてはならないですし、そもそも正解もゴールもない世界なので「常に現状に満足せず、己を高め、より上を目指す」という考え方が染みついていたのかもしれません。
逆を言うと、現状に満足できないからこそ継続できるとも言えますね。継続することで培われた忍耐力は今も役立っているので、ラッキーだったと思います(笑)。
主催した発表会の舞台リハーサルにて、娘のような可愛い生徒達と
【30代】再婚、フランス移住
フランス人の夫との結婚が決まったことです。
友人を通じて知り合いお付き合いをするようになったのですが、結婚話が具体化し、移住の選択肢が現れた時は戸惑いもありました。
ただ、そもそも夫とパートナーになった決め手は「私の最優先事項は子供」という考え方に理解があること。子供たちとも話し合いを重ねたうえで渡仏を決意しました。とはいえ、当時はふたりとも小学生。お友達とも離れ異国の地に行くことで不安定にならないかずいぶん気をもみました。
少し前、10代後半になった2人と渡仏の決断をした当時について話した時「最初は大変だったけどママがした決断は正解だったと思う。ありがとう」と言ってもらえた時は、涙が出るほど嬉しかったですね。
紆余曲折ありました。夫の両親への挨拶のために初めて渡仏した時は、一生行けないかもしれないと思っていた夢のオペラ座をこの目で見ることができ感動!
ただ、旅行ではなく暮らすとなると現実が一気に降りかかってきます。フランス語はもちろん、文化・マナー・笑いのツボまで違い戸惑う日々。さらに、渡仏後すぐに劇場でテロ事件があったんです。テレビや新聞で報道される緊急ニュースを見ても理解が追い付かず「私はママなのに、夫なしでは何かあっても子供を守れないんだ」と、これまでの人生で一番落ち込みました。
事前にわかっていたことではありますが、日本では一人の大人として当たり前のようにできていたことができない現実に直面し、心が疲れてしまって。スーパーの帰り道、会社帰りのフランス人がカフェで一杯飲みながら談笑しているのを横目に、自分の居場所がないような気がしたり…誰からも責められたりはしていないのに、心が不安定な時って、同じ景色を見て同じ言葉を聞いてもまったく異なる捉え方をしてしまうんですよね。
家でふさぎこんでいたらまずいと思い、語学学校やバレエショップの面接に行ったことも。中でも、得意なものをいかして交友関係を広げようと出かけたバレエスタジオでフランス人の友人ができたのは大きかったですね。
言葉が流暢ではなくてもある程度非言語コミュニケーションがとれたので仲良くなれ、今では家族ぐるみで付き合いをする親友です。
これからやりたいこと
「自分のために使う時間」を大切にしていきたいと思っています。
それから、パリライフをもっと楽しめたら。20代前半でママになり、渡仏してからもこちらでの生活や娘の妊娠・出産とずっと家族や仕事優先の生活をしてきたので、長年パリに住んでいながらパリを楽しめるようになったのはここ最近で…(笑)。
最近はバレエのレッスンに週2回行きはじめたんですよ。あとは、思い切って有名な「リッツホテル」の朝食をいただきに行ったりもしました。
これからは美術館に行ったり、おしゃれなレストランに行ったり、インプットする時間を少しずつ増やしていけたらと思っています。
美しいものやおいしいものを知り、それを仕事にもいかしていけたらいいですね。
パリでできた大切な友人と。やっとカフェに行く心の余裕ができ、自分に時間を使うことの大切さを学びました
恋愛や仕事など、何かで挫折してしまいなかなか立ち直れないという人へ「挫折は自分が成長する機会で、充電期間」と伝えたいです。
自身も大変な経験をしたからこそ「自分には価値がない」と落ち込んでいる人に「そんな事ないよ、あなたには素晴らしい価値があるよ」と言っても響かない事を知りました。
落ち込んだ時は自分を責めず、無理に脱却しようとしないこと。長い目で見れば失敗なんてないし、だいたいのことは10年経てば忘れるか、少なくとも記憶が薄れるので、自然に任せてみてください。
そして、ゆっくり自分を見つめ直して、もしもやりたいことが出てきたら、周りに宣言しておきましょう。思わぬチャンスが舞い込んだり、運が向いてくるかもしれませんよ。
また、結婚や離婚・子育て・夫の転勤といった外的要因で環境が変わり、これまでのキャリアを見つめ直さざるを得なくなる女性もまだまだ少なくないと思いますが「これまでやってきたこと=自分ができるすべて」ではありません。それに、環境が変わってしまうことでこれまでのすべてがリセットされるわけでもありません。
無理なことを無理と言うのは大切ですが「まだ出会ったことのないワクワク」が見つかるチャンスだと考え、環境が変わるからこそ新しく手に入るものに目を向けてみても良いのではないでしょうか。
また、行き詰まりを感じている時こそ自分が本当にやりたいこと・学びたいことについて考える良い機会。
これまでとは全く違う領域にチャレンジすることで、好奇心を刺激されることに出会えるかもしれません。
私の場合はInstagramが大きなチャレンジでした。日本にいたころは自分の写真や考えをSNSで発信するなんて…と、やったことがなかったのですが、q paris〈キューパリ〉のお仕事と出会い思い切って本格スタート。
その結果、たくさんのバレエダンサーさんや、パリで活躍する方々、そして大好きなフォロワーさんたちに出会え、日々元気をもらえています。
自分の好奇心の芽をつぶさず「ダメならやめればいい」くらいの気持ちでトライしてもいいと思います。
q paris〈キューパリ〉のプロデューサーとして
はい!パソコンを使うお仕事は初めてだったので、最初は不安もありました。
けれど、それ以上に「やってみたい」という気持ちが勝り、思い切ってスタート。
はじめてオペラ座を見たときの感動やバレエの魅力、何より歩くだけでワクワクするパリの芸術的な街並みの美しさを、q paris〈キューパリ〉のアイテムを通じて日本の皆さんに届けることができ、日々やりがいを感じています。
伊勢丹ポップアップに向けての日本出張前、シャルルドゴール空港で娘さんと
また、2022年には新宿の伊勢丹でポップアップイベントも開催。
フランスに移住してから夫に頼りっぱなしだった私が、自分の力で、仕事で日本に帰国するという大きな目標が叶い、大好きなフォロワーの皆さんや素敵なお客様にも出会え、心から嬉しかったのを覚えています。
伊勢丹のポップアップの様子。たくさんの出会いがありました
私はここ数年でやっと「自分はフランスで生活できている」と胸を張れるようになりはじめたばかり。時間はかかりましたが、自分で選んだのなら・やりたい気持ちがあるのなら、諦めず継続することで見える景色があると思います。
q paris〈キューパリ〉は、「アイテムを通して、パリジェンヌの生き方やスタイルもその身にまとってほしい」という想いが込められたブランド。
何かを選ぶ時「自分の心がときめくかどうか」を大切にするパリジェンヌのように、アイテムを手に取ってくださる皆さんにも「自分にはこれしかない」と自ら可能性を狭めないでほしいと思っています。
私自身、ずっとバレエだけを続けてきて、他の仕事ができるなんて考えたこともありませんでしたが、今はなんとかやれています(笑)。
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あらゆる環境の変化にも柔軟に対応しながら、自分の信じる道を突き進んできたChisaさん。
そんな彼女の生き方は、どんな場所でも、自分らしくしなやかに生きるヒントになるかもしれません。
「最近はInstagramでのライブを通じて、ユーザーさんの生の声を聞けるのが楽しみ。
視聴者さん同士の交流が生まれたりするのも嬉しいし、みんないい方ばかり」
そんな風に笑顔で話す彼女だからこそ、たくさんの人に恵まれるのでしょう。
Q & A
Instagramでもよく来るという相談にChisaさんが回答!
Q.「ママ」も「妻」も「お仕事」も頑張るのに疲れてしまいました。
A.「さぼったところで死ぬわけではない」マインドを持ちましょう。
特に「ママ」や「妻」はお疲れ気味の時は多少さぼってもいいんじゃないかと思っています。
日仏で安易に比較することはできないものの、フランスには、何もかも完璧にこなさなくては!というママが日本より少ないような気がします。私もフランスのママとの交流を通じて子育ての力の抜き方を学びました。
お料理も毎日手作りの必要はないし、リセットしたい時は「ママは疲れたから、少し1人にして」と子供に伝え部屋にこもったりもしますよ。ほかにはパリの周遊バスに乗り1日ぼーっとしたり、好きな曲を聴いたり…。
また、ママも仕事も頑張るのは素晴らしいことですが、時にはどちらかを優先しなければならない局面もあるはず。
私はシングルマザーだったころ「子供たちを守らなくては」と仕事に明け暮れ、小さかった息子たちと毎日たっぷりコミュニケーションの時間をとれたわけではありません。けれど、成長した今「あの時仕事を頑張ってくれてありがとう」と言ってくれる子に育ちました。
逆に、もし子育てに専念できる環境なのであれば、一時専念してみるのだってアリだと思いますよ。子供は案外親の背中を見ており、頑張りは伝わるものです。
Q.時短のコツは?
A.洗濯や掃除・皿洗いなどの家事を、子供がある程度の年齢(我が家は幼稚園の頃。
もちろんやり直しは必須でしたが...(笑))から可能な範囲で任せてみて、抵抗感を薄れさせるのがおすすめ。
大きくなってからいきなり「家事をしなさい」と言うよりも自然に家事をする子に育つよう仕込みましょう(笑)。
q paris〈キューパリ〉が
「チャコット代官山本店」にて
ポップアップイベントを開催
2023.7.21(金)~23(日)
期間限定でバレエ用品ブランド
Chacott(チャコット)とコラボレーション!
当日はChisaさんもパリから凱旋し、店頭に立ちますので、遊びにいらしてくださいね。
遊びに来ていただいた様子をその場で指定ハッシュタグとともにSNSに投稿すればマカロンもプレゼント!※
また、チャコットとコラボした限定モデルも発売。※
※どちらも数量限定のためなくなり次第終了となります。予めご了承ください。
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